いいだ人形劇フェスタ 2023 で観た作品と思ったこと
観た作品
かわせみ座
- 以前なかった「語り」が増えてた。個人的にはなかったときのノンバーバル感がシンプルで好きな気もするけど、あれほど完成された(そのままやりつづけてもよさそうに見えてた)スタイルをアグレッシブに変革し続けるのは、好み抜きにすごいと感じる。
- 朗読家さんのお仕事は素晴らしかった。日本語のいろんなリソースをもっと勉強しないとなと思った。
- かわせみ座さんの演目は、これまで人形劇団ノイの団員の数々に刺さりまくってきたことでも知られる(?)。一緒に行った後輩 1 年生ふたりにも見事刺さった様子だった。人生初の人形劇鑑賞だったらしい。かわせみ座作品から歩みを始めた彼らの今後が楽しみ。
むすび座
- 『チト』観劇は 2 回目。前回からの間に木下さん・林さんなどよく知ったキャストさんがガンガン入れ替わっており内心ドキドキしてたけど、全く気にならない凄さだった。
- 一度めでたし感出てからの最後 10 分が一番おいしい。原作通りなのかもしれないけど、『オズ』を制作していたときのむすび座さんが、キャラクターの内面や成長をとても真剣に考えていたのを思い出すと、むすび座さんらしいストーリー構成とも思う。
- 東海地方の劇人さんたちのオブジェクトを使った表現や、人間とオブジェクトの距離感が、やはり自分はすごく好きなんだなと思った。学校のシーンとか、兵器に花が咲くシーンとか、かっこよい……とても……。
人形芝居ぶんぶく
- 初観劇。稲田も一緒に行った学生系 OG さんも、インターネットでの発信が気になっており観に来た。少なくとも我々の世代には、積極的なネット広報が大事であることが明らかになった。
- 舞台も客席(40 席)もサイズ感が素敵。裏方含めコンパクトゆえの様式美があると思った。40 分ゆったりと続く心地よさ。ずっとキャラの演じ分けが崩れないのすごい(小並感)。
- 2 ステともにチケット完売したのがそのクオリティを物語っている。弾丸日帰りしなければならない NEU の現役勢はぎりぎりまにあわず帰ってしまった後だったが、観てもらいたかった。
- 子ども向け作品も観てみたくなった。機会があればまた行く。なんなら今度都内公演あるようなので首都圏のみなさまはぜひ。
百鬼ゆめひな
- ローマ空港でのロストバゲージの件を X(Twitter)でずっと追っていたので、ひとまず丸い形で公演できていたのを拝見できてホッとした……。
- 今年は飯田人形劇場公演で、仮設でない舞台で見るのは初かも。邦楽の生演奏があったりと、これまでと違う体験ができた。
- 1 日ウロウロしすぎて若干疲れ気味で観ることになってしまったのがもったいなかったかも。集中できる状態を維持するの大事。
糸あやつり人形劇団みのむし
- ITO プロジェクトを観たり、映像を観たり、はたまたアトリエにお邪魔したりもしたが、みのむしとしては実は初の生観劇。
- ツッコミどころ満載なネタ感に関西風味を感じて嬉しかった。登場人物のセリフが必要最低限なのとかは独特な風味。
- 平土間席でもプロセニアムのてっぺん越しに演者さんが見えるのが、お芝居の魅力であるところのライブ感を支えていた。
- 終演後、ノイの OG さんと舞台に突撃。快く舞台裏を見せていただいたみのむしのみなさんに感謝。
演劇企画ポカラの会
- 夢うつつな弟だけが人形でほかは人間芝居という変わった形式。生死のことを考えさせたり、冷静な観察をさせたり、そこだけ人形にする意図はいろいろ考えられそう。いいだラインナップの中でも特に玄人な作品だし、人形劇の面白いところをまさに踏み抜いていると思う。
- 原作が好きで 2 回目鑑賞。しっかりとした劇場空間(飯田人形劇場)だったのが良かったのか、前回観た時よりも格段に印象が良かったし、いろいろ新しく気づくことがあった。音も光も綺麗で見ごたえがあった。
- やはり自分には木村繁さんの演出が確実に刺さることを確信。自分自身がつけた演出を見返してもすごく影響を感じる。Love……
Long & Short Company(韓国)
- "A Show with Strings" 。ノンバーバルで、手をヒトに見立てた人形と紐を使ったパフォーマンス。これだけ少ない要素で、観終えた後の快感まで見事にデザインされているのは、制作過程ですごく研究したのだろうと感心しきりだった。
- 愉快な感じのキャストさんで、ツボ浅めの稲田はずっと笑いっぱなしだった。フェスタの最後が笑って終われるのよい。
いいだ経験知として海外劇団作品はあんまりハズレがない。国外に来るような人だから生存バイアスかかってるのはそうとしてもやはり、言葉の壁を超えたノンバーバルな作品が、具体性を削ぎ落としていく人形劇・オブジェクトパフォーマンスに相性が良いのだろうなと思ってる。
フェスタ参加についてあれこれ
コロナ関連
初回 2017 に参加してから 6 年、開催された回は全部参加してるので 4 回目。とにかくコロナからの復活が喜ばれる回でしたが、実際に参加したらやはりまだ影が残るような雰囲気を感じました。
- 海外作品が韓国と台湾のみに限定されており、ヨーロッパや中国の作品を観ることができなかった。
- 今年の海外作品も十分に面白かったんだけど、やっぱりいろんな文化圏の作品に気軽に触れられるのがフェスタの魅力であったと思っているので、以前を知っている者としては残念な気持ちもある。
- 稲田の把握が正しければ、フェスタの体制は中止になった昨年の計画をそのままシフトしてるはず。今年来るはずだった来年のプランを待ちます。
- 海外劇団のみならず、フェスタの参加者そのものが明らかに少なかった。
- あくまで主観ベースではありつつも、今年のガイドブック薄いな……と思ったのは稲田だけではないと思うし、有料公演の売れ行きも絶好調ではなかったように見えた。
- 例年上演劇団ののぼり旗が立つ本部前には、上演しないノイののぼりが 2 本も立っていた……。
- (あれって上演劇団だけだと思ってたんだけど、違ったらすみません)
- あくまで主観なので、フェスタ公式からどんなまとめがでるのか注目している。
- 学生交流公演(プロの指導をもらえる)や公民館宿泊(多数のメンバーが安価に泊まれる)が実施されず、学生としては大ダメージだった。
宿泊施設の予約は、面白いことに、6 月末頃には一部の隙もなく売り切れていたので、これらの観測事実から考察するなら、ボトルネックは公民館宿泊がなかったことということになります。いや、実際はコロナの状況を見て参加を控えた人とかもいるだろうし、一概には推測できないですよね。ううん。
そのほか
- (筑波大固有の問題だけど)今年も大学の試験期間に完全被りだった……
- (cf: 春 C モジュール試験期間 8/3-8/9 vs フェスタ 8/3-8/6)
- これでは、他の問題が解決したとしても、ノイが上演できるかは非常に怪しい。
- 稲田の知る限り毎年こうなので、試験かフェスタかどちらでも良いので日程がズレるミラクルが起きてほしいと毎年願っている。(フェスタの実行委員長さんは学生出身であり、このへんの問題も認知してくださっているはず)
- フェスタセントラルパークの暑さ対策が限界を迎えたようで、開設が今年限りとのこと。
- 気候変動がわかりやすい形で我が身に降ってきた感じがある。
- 結いスクエア(新・中央公民館)に移転を検討してるそうだけど、フェスタらしい人の集まりが見える看板会場だったので、今後どういう雰囲気に変わっていくのか気になる。
- ガイドブックから会場の一覧地図が消えていた。どうして。
- 今年たまたま会場地図のソリューションを企画していた(未公開)ので、作りかけていたプロダクトを自分で使いながら回ったりした。